月イチワンマン THE FINAL 50曲ライブ。


 

昨夜のことを書こうと思う。記憶が薄れてしまわないうちに。

 

2017年、ビードローズは新横浜ベルズで月イチでワンマンライブを行った。この企画が出たのは、2016年の5月29日に、YUSAKUくんが誘ってくれたイベントでベルズに初めて出演した日まで遡る。

ベルズの社長の小山さんが、終演後30分ほど僕らの音楽を絶賛してくれた。そして、未来へのビジョンを提示してくれた。月に一回ワンマンライブをやらないかと。

僕らにとっては冒険以外の何物でもなかったのだけれど、(実際、やると決めるまで何度もバンド内で話し合ったのだ)僕自身は挑戦したい気持ちが大きかった。なぜなら、この時の小山さんが言ってくれた言葉がずっと心に残っていたからだ。

その時期、自分の歌声に自信がなくて、疑問さえ抱き始めていた僕に、

「そのままの自分の声を受け入れられるようになったら、もっともっと良くなるよ」

と言ってくれたのだ。(社長はもう忘れていると思うけど)

 

それに、間も無く結成20周年を迎えようとするバンドにとって、”何となく”で時間が過ぎるのは危険だということもあった。時には劇薬も必要なのである。メンバーもそれぞれ、自分の仕事と生活が忙しい中での月イチワンマンはそれなりの覚悟が必要だったが、僕らは前に進んでみることにした。

 

始まってみれば、毎月違うテーマに挑んで、さらに新曲を発表して行くというのは崖の端でピストルを構えられて踊っているようなものだった(この感じわかるかな?)。

何とか乗り切るたびに次の試練がやってくる。ベルズのスタッフ、舞台 / 照明のIさんとPAのKさんが中心になって、僕らを支えてくれた。

最後は産休のため立ち会えなかったけれど、いつも音を録音してくれたMGさん。途中から自分の夢を叶えるために忙しい仕事についてしまったけど、ほとんどの回でいつも笑顔で楽器を運んでくれた溝手くん。全ての回でビデオを記録してくれた小野さん。

みんなに支えられて、月イチワンマンは続いて行った。

 

社長の小山さんは、なかなか動員が伸びないバンドに、貴重な週末を最優先で空けてくれていた。懐の広さ日本一のライブハウス。そしてこのハコの音の良さ。僕らの演奏が一番うまく表現できる環境の中でやらせてもらえたと思う。

 

12月で一旦区切りはついたのだけれど、また小山さんがものすごい案を出してきた。ファイナルを1月に、それも50曲ライブをやろう。その先にきっと見えるものがあるから。

一体、何が見えるというのだろう。それは行って見ないと分からない。

勇気のいる決断だったのだけれど、半ばヤケクソな気分で、僕らはまたしても進んでみることにした。迷った時は、やるのである。

 

そして昨夜。幕が開けば、もう進むしかない。気持ち的には見切り発車の中、次々に曲を演奏して行った。第一部の後半、縄田よぴさんとYUSAKUくんがゲストで出演してくれて、ちょうどテンションが落ちそうなところで新しい風を入れてくれた。第一部終了、ここまでで20曲。普段のワンマンの曲数をすでに超えている。休憩を挟んで(カレーが爆発的に売れたので予定より長い休憩になった)第二部。ここはアコースティックに10曲。

 

さあ、残りは20曲。いつのまにか、外は暗くなっているらしい。もはや疲れているのか、まだまだ行けるのかもよく分からない。何とか正気を保とうとしているメンバー。

そんな中、スペシャルゲストの榊いずみさんが、楽屋に元気を届けてくれる。そして素晴らしい歌を披露してくれる。

 

あと17曲。ダークな曲が続く。自分の中に音楽が広がって行くのがわかる。音が波となって脳の中を支配し始める。まるで音楽の海の中にいるようだ。自分が今、歌を歌っているのかさえ分からなくなる。曲が終わった時、息継ぎをしに海面に戻る。チューニングをして、また深い海に潜って行く。真っ暗な深海ではなく、光がまだ届いている。けれど、方向感覚は全く無い。どちらが上でも下でも構わない。

 

最後の7曲。「Universe!(Are We?)」から、2017年の新曲「半径5M」に行くところだったが、ドラムのコジマが「ロードソング」に入ってしまう。それもまた良し。ラストのギターソロは長めに。フロントマンは勝手に走るけれど、バンドはぴったりと付いてくる。この感覚。欲しかった感覚。

曲順を間違えたことを確認して、改めて「半径5M」。

そこから「スパイダー」へ。口ずさんでくれている人を見ると嬉しくなる。「風に歌え」へなだれ込む。

喉はそろそろ限界を迎えている。火傷したように熱くなっている。腹に力を入れる。前半、気をつけていた姿勢や声の出し方は全部頭から吹っ飛んでしまっている。苦しいけれど、どこまで行けるのか試してみたい気分にもなっている。汗が音を求めて吹き出してくる。どこからか、「青ノ時代」のイントロのピアノが聴こえる。最初の歌詞がこぼれ落ちる。「伝えたいことなんかない」と歌う。ただ、みんなが近くにいてくれればいい。今、みんなが近くにいる。

 

最後のMCは軽く済ませる予定だったのだけれど、不意に何かが込み上げてくる。

 

最後の曲には、「君がいない」を選んだ。ラストの部分の歌詞が、フィナーレにふさわしいと思ったからだ。

 

“星を消しながら現れる朝焼け ひとしずく涙こぼれ落ちたなら

もう一度やり直してみよう もう一度やり直してみよう”

 

僕らは再生の歌を歌ってきた。そしてこれからも歌って行くだろう。

楽器は関係ない、全員が歌うのだ。だからこそ、この四人の意味があるのだ、と思う。

 

みんなが立ち上がって僕らを見ている。僕らの音楽を心待ちにしてくれている人がいることを確認する。それで、ああ、良かったんだ、と思う。間違ってなかったんだと、思う。

 

 

今日という日を、みんなで創り上げてくれて、ありがとう。本当にありがとう。